2014.11.25 

Tokyo Art NavigationによるFBページ「今週のアーティストピックアップ」に掲載されました。

https://www.facebook.com/TanCompe?pnref=story

(以下は記事からの転載になります)

 

 

【今週のアーティスト・ピックアップ】http://tokyoartnavi.jp/artistfile/detail.php…

前田麻里はペインティング、写真、立体など多様な表現手法を用いる若いアーティスト。素材感やボリューム、マチエールを生かした作品と周囲の空間を利用した展示には、建築科出身者ならではの視点を感じさせます。
それが顕著に表れているのがレストランや病院などでの展示活動です。レストランの黄色い壁には、店の外に広がる青い夜を。病院の壁には、窓の外に憧れそこから一歩踏み出して行く女性の姿を。センシティブだけど必要以上の干渉をしない、人間のほのかな体温を感じさせるタブローを掲げ、見る人にそっと寄り添い慰めるような作品空間を作り出してきました。
鑑賞者が作品を「見る」だけでなく作品と「ともにある」状態をつくりだす。その「場」こそが前田さんのつくりだす作品だと言ってもいいかもしれません。

その傾向をインスタレーションとしてラジカルに展開した作品が「コンクリート・ドロップ」です。
この作品は、彩色された様々な形のコンクリート片を露天に並べ、足を留めた者にその中から自分に似ているものを(あるいは直感的に)ひとつ選んで購入してもらうというもの。その後、家のどこにその塊を置いたのか、どのように使用しているかなどを追跡調査し、場合によっては家まで行って確認する、というところまでが企図されています。
無意味の塊であるコンクリート片に、鑑賞者が意識的に関わることで、それが意味と価値のあるものに変化するのです。作品を通じて新たな価値観を発見する体験こそ、まさしくアートではないでしょうか。一般の人びととその体験を共有するために作家がおこした具体的(コンクリート)な投げかけ(ドロップ)を、語感ともども非常に興味深いと思いました。

芸術の主体は作家と鑑賞者の両方であり、その間で作品はどのような役割を担うのだろうか。そんな本質的な問いかけが、常に前田さんの作品から透けて見えてくるようです。その作品には荒削りで未完成な部分も見られますが、本質に迫る直観の鋭さと、作家としてのスケールの大きさを感じます。前田さんが今後も自らの目指すものと向き合い続け、それを作品へ展開していくことを期待しています。《TAN編集部》

 

作品写真は1枚目から順に、
《gather #01》2014 60×100cm ベニヤ板にアクリルガッシュ・塗料・釘など(Spice BAR 猫六での展示風景)
《BLUE》2012 左右とも45×35cm キャンバスにアクリルガッシュ(救世軍清瀬病院での展示風景)
《コンクリート・ドロップ》2014 インスタレーション モルタル・塗料・ビスなど